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工房の主人

-映画を「見つける」までの、長い長い道のり(3/5)-

欠点を知る
たどり着いたのは、ザルツブルグ。
本格的に絵を売ろうと思った。


そして、僕は恋をした。
絵を描く度に、周りに人垣ができた。
絵はすべて、描いている最中に買い手がついた。

彼女といると、時間を忘れた。
グルグルと、一緒に街を歩き続けた。

僕は傲慢になっていた。
絵が高く売れることを喜びとしていた。

そしてある雨の降る日、
僕は、失敗をした。


後に残ったのは、
彼女が最後にくれたこの国の記念コインと、
彼女のために描いた、絵。


目的作り
僕は、絵を売ることを、やめた。

ウィーンの街角で野宿をした。
寒くて死にそうだった。

いい気味だ。
また心が暗く、なってきていた。

目的を見失うと、つぶれる。
自分はそういう人間だと、分かった。

何にも知らない土地に行きたい。
僕は、ボスニア・ヘルチェゴビナにいた。

現実を見る
日本人ボランティア団体に接触。
子供たちに授業をすることになった。

オリガミは子供たちには難しかった。
うつむいて紙をいじる子。

言葉が通じないけれど、手伝ってあげる。
完成して、彼女は初めて、笑った。
子供の描く絵。
血まみれの人間と、戦車。

僕らとなじまない子供がいた。
「こっちへおいでよ」と僕は誘った。
「どうせ、すぐまたいなくなるんでしょ」

返す言葉がなかった。
街の中心部には、戦争で亡くなった人々の墓が延々と続いていた。
没年を見る。

どれも、1年前のものだった。

郊外に、きれいな公園を訪ねた。

辺りには、景観を損ねる、黄色いテープが張り巡らされている。
テープには、"地雷注意"の文字。

きれいな街並みも、近づくと廃墟だったりする。
家の壁には無数の銃弾の跡があった。

僕はカメラを向けるのをやめた。
のんきに見学に来ている自分に、吐き気がしていた。
学校の子供たちの顔が浮かんできた。
目の前で親を殺された子もいたのだ。

涙を隠すため、サングラスをかけた。
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